八峰白神ジオパークと世界自然遺産白神山地

白神山地の一部は世界自然遺産に登録されています。そのため遺産地域は国際条約によって厳しく保護されていますので、地層や岩石を手にとってみることが出来ません。幸いにも、八峰町から青森県深浦町にかけての山地は白神山地全体のかなりの部分を占めております。山地の西の端は日本海と接していて、白神山地をあたかもデコレーションケーキをナイフで切ったように波で削られています。そのため山地の中身を作っている地層を遺産地域に入ることなく連続して見ることができます。

八峰白神ジオパークと世界自然遺産白神山地写真

グリーンタフ変動からの贈り物~鉱山・油田・温泉~

八峰町には昔から小入川銀山、椿銀山、小規模ではありますが水沢銀山が、また八森集落から峰浜地区の一部にかけての一帯に油田がありました。さらに地下1000mから温泉を掘り出しています。これら地域を調査した人々からは「この地域はいろいろな地層が少しずつあって、まるで地層の箱庭みたいだ」と言わしめたくらいこの地域の地層は変化に富んでいます。 タイトルにある「贈り物」はユーラシア大陸の東側に日本海が作られた時の大変動(グリーンタフ変動)にかかわって形成されたものです。今から2,360万年前の話です。

グリーンタフ変動からの贈り物~鉱山・油田・温泉~写真

バラエティに富んだ地形~けわしい山地からなだらかな平野まで~

白神山地は現在も盛り上がっているらしく、山地一帯はけわしい山岳地帯になっていて簡単に人々を近づけませんでした。そのため山地のほとんどが人間の手が加えられることなく現在に至っております。これが白神山地の一部が世界自然遺産となった大きな理由の一つでした。 山岳地帯を流れる水は山肌を削り麓に近づくと滝を作ります。それらの滝にはしばしば神々が祀られ、地域に深い信仰が芽生える元となりました。平地に運ばれた土砂は広い平野をつくり、人々は耕地として活用し豊かな生活を営んできました。

当地域は、このように自然と人間のかかわりをこんなに狭い地域でいろいろと体感できるところです。

バラエティに富んだ地形~けわしい山地からなだらかな平野まで~

主な見どころ・
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鹿の浦展望台

海岸沿いによく発達する地形で、階段を思わせる形をしているので「海岸段丘」と呼ばれています。八峰町ではこの段丘が発達していて、そのうち6段を良く観察することができます。段丘面はもともと海底であった部分ですので、同じ段丘であれば陸地になっても同じ高さでなければなりません。ところが、写真後方の段丘面が手前の段丘面よりわずかばかり高くなって見えます。実際に段丘面の高さをそれぞれ測ってみると、後方は210m、手前は130mでした。

八峰町では後方、つまり北に進むほど土地の盛り上がりが大きいことを私たちに知らせてくれていることになります。

鹿の浦展望台 写真
鹿の浦展望台 写真
アクセス情報
大館能代空港より50分
秋田空港より1時間40分
秋田自動車道能代南インターより40分(国道101)
秋田自動車道能代東インターより35分(広域農道)
秋田市より国道7号、国道101号で約84㎞

椿海岸の柱状節理

この溶岩流は椿海岸にあるもので、長さは約90mにも及びます。よく観察すると、たくさんの柱が集まっているように見えます。溶岩流の上を歩きながら柱の断面を見ると五角形や六角形になっていることに気づきます。このような割れ方をした様子を柱状節理といいます。

また先端部は半円を描くように曲がっていて、柱というよりは板に近い割れ方をしています。そのほか、湾曲した柱など、さまざまな形の柱の形のあつまりを見ることができます。この溶岩流は「八森椿海岸柱状節理群」として秋田県指定の天然記念物となっています。

椿海岸の柱状節理
椿海岸の柱状節理
椿海岸の柱状節理

中浜海岸

中浜海岸ではハワイとそっくりな海岸を見ることができます。ここの砂は真っ黒で、「ブラックサンドビーチ」という名がぴったりです。

この砂の正体は、かつて近くにあった発盛鉱業所の溶鉱炉から流れでてくるカラミ(鋼滓)です。真っ赤に流れ出てくるドロドロとしたカラミにホースで水をかけると、木っ端微塵に砕け散りたちまち黒い砂が出来上がります。これが水と一緒に海へ流出、そして岸に打ち上げられて黒い砂浜が出来上がりました。

ハワイ島では火山から流れ出た溶岩が海に落ち込むときに同じ現象が起こります。粉々になった溶岩が黒い砂となって海岸に打ち寄せられブラックサンドビーチと呼ばれています。

中浜海岸
中浜海岸

岩舘の貫入岩体

岩館海岸には白っぽい岩の帯がみられます。近寄ってみると白っぽい岩は硬く、表面が角ばっています。これはデイサイトと呼ばれている岩石で、マグマが冷えて固まってできたものです。

この場所では地下のマグマが、地層を割りながら昇ってきました。白っぽい岩の帯はマグマの通りみちとも考えられます。その時の温度は800℃くらいあったと考えられています。白い岩の周りにある赤褐色の岩体は、もともと暗緑色の凝灰岩でしたが割れ目に沿って昇ってきたマグマの熱で赤褐色に変化してしまいました。

そのほかにもマグマの貫入によって起こったであろういろいろな現象をこの場所で発見できるかもしれません。

岩舘の貫入岩体
岩舘の貫入岩体

魚岩

八峰町泊海岸にはいろいろな海食地形がみられます。そのなかのひとつに地元中学生が“魚岩”と名付けたものがあります。これは安山岩の角れきや亜角れきなどが火山灰によって固められてできた“凝灰角れき岩”でできていることが分かってきました。

魚の口の、上あごの線は火山灰の地層の方向、下あごの線は岩体にできた割れ目の方向と一致しており、その二本の線で挟まれた部分が海食によって削り取られて、魚の口が形作られました。

魚岩

ポンポコ山の砂丘

峰浜地区には「十八石」という地名があります。昔この土地から米が18石生産されていたので付いた地名だと言い伝えられていますが、現在は砂丘地になっています。 この付近の砂丘の断面を観察すると、2層の腐植土層が挟まれていることがわかります。この腐植土層は飛砂の休止期にできたことがわかっているので、3回の飛砂、その間に2回の休止期があったことを意味します。

2回目の飛砂は10世紀前半に起き、十八石の水田が埋もれたのはそれ以降であることが明らかになっています。ここでは砂丘の形成や、人々の大変な生活の歴史を感じることができます。

ポンポコ山の砂丘
ポンポコ山の砂丘

高野々断層

峰浜中学校の生徒が自転車で毎日通学するときに苦労する峰浜・田中地区の坂道。登校時は登り坂、頂上を過ぎて今度は急な下り坂。

この坂は、「高野々断層」と呼ばれている断層によってできています。断層線はほぼ南北に伸びていて、この断層を境にして西側の土地が盛り上がり、坂ができました。

高野々断層

小入川鉄橋

鉄道写真マニアの間ではよく知られている小入川鉄橋は大正15年(1926年)に完成しました。橋脚は8基からなり、最も長い橋脚は高さ24.9m(地下に4mほど掘り込んでいるので全体の長さは28.9m)になります。この橋脚はコンクリートの周りを安山岩の間知石で固めたつくりになっています。

小入川集落は1718年に八森銀山が発見され大変な活気がありましたが、その後銀山が廃山になると交通の便が悪いこともあって陸の孤島の様相を呈していきました。しかし、この橋脚が完成したことによって人々の生活を支える鉄道・五能線が開通しました。

小入川鉄橋
小入川鉄橋

花こう岩

白亜紀は恐竜時代とも呼ばれ、たくさんの恐竜が生活していた時代です。今から1億5千万年~6千500万年前の時代の話で、その頃はまだ現在のような日本海が形作られておらず、八峰町は大陸の東海岸付近となっていました。この頃、地下には花こう岩を作るマグマが溜まっていて、次第に冷えかたまりつつありました。

時が過ぎ、この地域の大地が盛り上がりはじめました。山地となった大地は風雨にさらされ壊れては土砂となって海まで運ばれました。この活動は長い間続き、大陸を作っていた地層はなくなり、地下で出来た花こう岩などの岩石が地表に現れました。

花こう岩

チゴキ崎

マグマだまりから上昇してきたマグマが水にふれると大爆発を起こし、水面から噴煙の柱がまっすぐ上に立ち上がります。その柱の根元からドーナツ状の雲ができ、柱とは別に海面の上を広がっていきます。これがベースサージです。

ベースサージの中身は火山灰と水蒸気が混じりあった爆風です。やがてその火山灰が積もって岩石になりますが、このようにして出来た岩石が岩館海岸、灯台の近くで見られます。1回の大爆発で1枚の火山灰層が出来ますが、この付近では薄い層が何枚も重なっています。今は静かな大地ですが、当時は凄まじい爆発がこの浅い海で何十回とくりかえして起こっていたことがわかります。

チゴキ崎

基本情報

ジオパーク名:八峰白神ジオパーク

ジオパーク名(英語表記):Happo-Shirakami Geopark

団体名:八峰白神ジオパーク推進協議会

構成自治体名:秋田県八峰町

お問合せ先

■八峰白神ジオパーク推進協議会

〒018-2502 秋田県山本郡八峰町浜目名潟字目長田118番地

TEL 0185-76-4605 FAX 0185-76-2203

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■ウェブサイト 八峰白神ジオパーク