概要

 島根半島は、山塊がほぼ東西67kmにわたって雁行状に連なっており、その南側には出雲平野・宍道湖(しんじこ)・松江平野・中海そして弓ケ浜半島へと連なる低地帯が広がっています。宍道湖・中海は連結潟湖として、国内最大の汽水湖を形成しています。この地域は、新第三紀の日本列島と日本海の形成に関わった地殻変動の中で日本海南西端に位置する地域です。

島根半島・宍道湖中海ジオパーク地形図

出雲国風土記

 出雲国風土記には、国土創生の国引き神話があり、八束水臣津野命(やつかみずおみづぬのみこと)という神様が海の彼方から「国来(くにこ)、国来」と4つの陸地を引いてきたと語られています。さらに川や山、海辺の様子、そこに生息する動植物なども詳細に書き留められています。またその当時の地名の由来が数多く語られており、現在でもその地名が残っています。出雲国風土記は1300年前を彷彿とさせる優れた地誌といえます。

出雲国風土記日御碕写本

ラムサール条約登録湿地

 宍道湖と中海は2005年11月に国際的に重要な湿地としてラムサール条約に登録されました。両湖を合わせた広さは、165.3㎢と国内最大の連結汽水湖で、毎年4万羽をこえるガンやカモなどの水鳥が飛来します。また、宍道湖の塩分濃度は海水の1/10、中海は1/2で、この違いにより生態系にはそれぞれ特色があり、宍道湖にはシジミ、中海にはアサリやサルボウガイ(赤貝の仲間)がいて、郷土の味覚を彩っています。

枕木山からの中海

主な見どころ・
おすすめジオサイト

加賀の潜戸

 島根町加賀の一帯は、千数百万年前の火山砕屑性堆積物で構成されています。旧潜戸付近は安山岩溶岩と火山角礫岩からなり、新潜戸付近は、軽石凝灰岩の級化成層が発達しています。新潜戸とその1㎞先にある的島は、同じ断層によって洞門が形成されています。「加賀」の名称は、佐太大神(さたのおおかみ)の母神・支佐加比売命(きさかひめのみこと)が金の弓矢で岩を射通されたとき、洞内が明るく光り輝いたことによります。

加賀の潜戸
洞門内鳥居
象岩

日御碕の柱状節理

 日御碕にはおよそ1600万年前に貫入した流紋岩の冷却収縮によってできた柱状節理が発達しています。1903年に建設された日御碕灯台は、高さは43.7mと日本一の高さを誇ります。経島は、ウミネコ繁殖地として国の天然記念物です。日御碕から稲佐の浜にかけては、岩石海岸が続いており、おもに流紋岩の火山砕屑岩や貫入岩の粗粒玄武岩でできており、礫(つぶて)島、筆投げ島などの景勝が続きます。

柱状節理と灯台
出雲日御碕灯台
経島のウミネコ

大社断層の巨大な擦痕(さっこん)

 海抜500m前後の山々が連なった弥山山塊は、平野との境界域に落差が1000mにもなる大社衝上断層が存在しています。この断層は沖積層で被覆され、直接見ることはできませんが、付随した断層として、大社湾に面した笹子島には、しゅう曲を伴った断層や巨大な条痕を伴い鏡肌となった断層面が発達しています。また、出雲大社の神迎神事が行われる稲佐の浜では、断層と関連した奇岩もみられます。

擦痕
ゴエンゴウロ
出雲大社

小伊津海岸

 およそ1500万年前の砂岩と泥岩が繰り返した地層で、洗濯岩ともよばれています。見た目が白色または灰色のものが砂岩、黒や黒灰色をしたものが泥岩で、砂岩が突き出し、泥岩が凹んでいます。近くには、島根半島で最も高い150mを超す海食崖にある百丈が滝(千杷(せんば)が滝ともいう)の与市伝説や、半島部の古刹である一畑薬師の本尊の薬師如来が発見されたという伝説がある聖地、赤浦海岸があります。
砂泥互層
千把が滝
赤浦海岸

地蔵埼

 美保関は、日本列島が大陸の一部であった時代に河口や湾で堆積した地層でできています。地蔵埼から北東約4km沖合にある沖の御前は、出雲神話に出てくる、事代主命(ことしろぬしのみこと)(ゑびす様)が鯛釣りをしていた島とされています。美保神社には国譲り神話にまつわる神事があり、小泉八雲もこの地を訪れ、「知られぬ日本の面影」で紹介しています。美保関灯台は、世界の歴史的灯台100選に登録されています。

地蔵埼
沖の御前鳥居
諸手船神事

出雲平野

 出雲平野は斐伊川と神戸川が運んだ土砂でできた山陰最大の三角州平野です。河川の長さや流域面積に比べて平野が非常に大きい点に特徴があります。その要因として、島根半島が日本海による侵食を防いでいるということ、縄文時代に三瓶山(さんべさん)から大量の火山噴出物が神戸川を通して平野に堆積したこと、江戸時代に「たたら製鉄」のための鉄穴(かんな)流しによって大量の土砂が流出したことが挙げられます。

旅伏山からの斐伊川
築地松
薗の長浜

嵩山(だけさん)・和久羅山(わくらやま)

 およそ500万年前のデイサイト質溶岩からなる火山活動によってできたものです。出雲国風土記には嵩山は布自枳美高山(ふじきみたかやま)とよばれ烽(とぶひ=のろしを上げる場所)がありました。東西から見える山塊の形から涅槃仏や女性の寝姿になぞらえ、市民に親しまれています。松江城の石垣には、この山の石が使われ、大海崎(おおみさき)石とよばれています。

嵩山和久羅山遠景
松江城と石垣

立久恵峡(たちくえきょう)

 立久恵峡の断崖は、新第三紀中新世の安山岩・デイサイト質溶岩及び火山砕屑岩や、浅い水域で堆積した礫層が屏風状になっています。立久恵狭の名称は、杭が立っている姿から立杭(たちくい)と呼ばれ、その後、立久恵と呼ばれるようになったといわれています。断崖の植生は、「立久恵峡断崖地植生」として知られるほか、国指定の名勝天然記念物及び島根県指定県立自然公園に登録されており、四季を通じて楽しめる場所です。

直立崖
立久恵紅葉
立久恵紅葉

花仙山のメノウ脈

 約1500万年前に花仙山一帯は、安山岩よりなる陸上の火山が噴出しました。この火山活動で形成された溶岩には、ケイ素の微粒子が脈状に沈殿した緑色のメノウが産します。安山岩溶岩は粘土化しているためメノウ脈が採掘されやすく、縄文時代から石器や勾玉・管玉の材料として利用されてきました。出雲国風土記では花仙山は玉作山と呼ばれ、古墳時代の玉作り遺跡が花仙山周辺で多数見つかっています。

勾玉と管玉
メノウの岩脈

八雲風穴(やくもふうけつ)

 八雲風穴は清涼山山麓に位置し、径20~30cm程度の岩屑が厚く堆積した斜面から冷風が噴出する崖錐性の風穴です。夏期の温度は、施設地下3階では5℃前後となっており、ユニークな自然現象を楽しめる場所です。岩屑のもとの母岩は約1600万年前の斜長石流紋岩溶岩で、海底に噴出した溶岩です。風穴の直下に湧き出る湧水は「福寿水」として島根名水100選に選ばれています。近くに須佐之男命を祀る須佐神社があります。

八雲風穴屋内
八雲風穴屋外
須佐神社

基本情報

ジオパーク名:島根半島・宍道湖中海ジオパーク

ジオパーク名(英語表記):Shimane Peninsula and Shinjiko Nakaumi Estuary Geopark

団体名:島根半島・宍道湖中海(国引き)ジオパーク推進協議会

構成自治体名:松江市・出雲市

お問合せ先

■松江市役所文化振興課ジオパーク推進室

〒690-8540 島根県松江市末次町86

TEL 0852-55-5399 FAX 0852-55-5070

■E-mail