筑波山地域は、茨城県中南部の石岡市・笠間市・つくば市・桜川市・土浦市・かすみがうら市の6市で構成されます。本地域は、日本百名山の一つ『筑波山』を含む筑波山塊、鶏足(けいそく)山塊南部、国内第2位の湖面積をもつ『霞ヶ浦』の北西部、日本最大の広さを誇る『関東平野』の北東部を含みます。
非火山の山々が連なる筑波・鶏足山塊には、日本列島の基盤形成に関わる三畳紀後期~古第三紀初期のダイナミックなプレート運動の歴史が、霞ヶ浦と関東平野には、第四紀の急激な海水準変動と緩やかな地殻変動に伴う海跡湖や平野の形成史が刻まれています。また本地域には、第四紀の気候・海水準変動の歴史を今に伝える森林や湖沼の生物・生態系、地形・地質に関わる歴史・文化・産業が数多く残されています。
以上の特徴から、筑波山地域ジオパークのテーマを『関東平野に抱かれた山と湖 ~自然と人をつなぐ石・土・水~』とし、地域内を3つのゾーンに分け、これらのゾーンや26のジオサイトをつなぐ7つのジオストーリーを構築しました。
男体山(なんたいさん)と女体山(にょたいさん)の山頂とその周囲に分布する巨石や奇岩は、すべて斑れい岩でできています。これらの巨石や奇岩は、マグマの冷却過程で形成された多方向の割れ目と、地表露出後の風化・侵食がつくり出したものです。
山頂付近のブナ林は、約2万年前の氷河期の生き残りと言われ、近年の温暖化や環境汚染に伴う衰退・減少が危惧されています。ブナの生い茂る登山道や自然研究路沿いでは、カタクリをはじめ四季折々の動植物を楽しむことができます。
筑波山梅林には、過去の土石流などがもたらしたマサや斑れい岩の巨礫などからなる山麓緩斜面堆積物が分布します。また林道沿いでは、筑波花崗岩が風化・侵食でもろくなり、マサ化していく様子を観察できます。
筑波山信仰の歴史を今に伝える筑波山神社は、筑波男大神(イザナギノミコト)と筑波女大神(イザナミノミコト)の夫婦二神を主神とする名社です。明治の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)までは、知足院中禅寺として人々の信仰を集めました。
霞ヶ浦西方に位置する出島半島の南岸には、約7,000年~6,000年前の縄文海進時の波浪でつくられた侵食崖が発達しています。崎浜から川尻では、この地域に古東京湾が発達していた時代(約12万~13万年前)につくられたカキ化石床が、この崖の中に見られます。カキ化石の保存状態から、この化石床がつくられた時の環境が復元されています。
崎浜では、このカキ化石床を含む地層を掘り抜いてつくられた、古墳時代後期の横穴式古墳が残っています。
出島半島先端の歩崎では、茨城県内で最初に指定された名勝地で、霞ヶ浦での水産業の発展に貢献した帆曳船(ほびきせん)発祥の地としても知られています。
歩崎観音に向かう参道沿いでは、約10 万~8万年前の海面低下を示す地層が見られ、下部では破砕した貝化石を含む砂質堆積物が、中部ではよく成層した泥質堆積物が、そして上部では斜交葉理がよく発達した砂質堆積物を見ることができます。この変化は、堆積環境が内湾から干潟、そして河川へと変化したことを示しています。
笠間盆地には、花崗岩の風化・侵食でできた粘土を多く含む地層が点在しています。石英粒子を多く含むこの粘土は蛙目(がいろめ)粘土とよばれ、江戸時代から続く国指定伝統的工芸品の笠間焼に用いられています。
笠間盆地の北部にある滝野不動堂では、小さな石灰岩塊が長年の風雨による風化・侵食を受けてできたカルスト地形が見られます。この石灰岩は、遠洋の海山上や海洋島の浅海域で形成されたものです。
花崗岩と変成岩(雲母片岩)が広く分布しています。新治段々(東城寺採石場跡地)では、地下深部から上昇した花崗岩質マグマが、周囲の岩石を破壊しながら貫入し、熱変成させていった様子を観察することができます。また、近くの朝日峠展望台からは、眼下に関東平野と霞ヶ浦を見渡すことができます。
この地域には、県や市の指定文化財にもなっている石仏や五輪塔、板碑などの石造物が多く残されています。これらの多くは、近くの花崗岩や変成岩を使って作られたものです。
土浦城跡は、桜川河口の三角州の地形を巧みに利用して建てられた江戸時代の城郭跡です。水辺に浮かぶその姿は「亀城(きじょう)」とよばれ、現在も残る水堀がかつての地形の面影をとどめています。
土浦市中心部の「まちかど蔵」周辺には、水郷として栄えた土浦の歴史を今に伝える建造物が数多く残されています。また、川口川閘門(こうもん)の鉄扉と揚水ポンプやJR土浦駅の高架は、桜川の氾濫や霞ケ浦からの逆流といった度重なる水害への防災遺構です。
酒寄では、山麓斜面堆積物がつくる水はけのよい斜面と、そこで冬季に形成される斜面温暖帯を利用した温州ミカンや福来(ふくれ)ミカンの栽培が盛んです。10月下旬~12月上旬の収穫期には、広大な関東平野を眼下に望みながら、観光ミカン狩りが楽しめます。
椎尾山薬王院の境内に繁茂する樹齢数百年を超えるスダジイは、茨城県の天然記念物に指定されています。このスダジイは本来西南日本の海岸沿いに多い樹木で、約7,000年~6,000年前の縄文海進時に筑波山のふもとまで分布を広げたと考えられています。
鶏足山塊の南端に位置する高峯から富谷山にかけては、今から約2億5千万年前~約1億5千万年前、「海溝」とよばれる深い海の底にたまった砂や泥でできた岩石が見られます。これらの山にある展望台からは、吾国山、加波山や筑波山の山並みと、岩瀬盆地や関東平野、そこを流れる桜川などの眺望を楽しむことができます。
高峯からふもとの岩瀬までのエリアは、ヤマザクラの群生地として有名で、特に磯部桜川公園周辺は国の名勝地、そこで咲く11品種は、国の天然記念物に指定されています。
高浜入りは、約2万年前の氷河期に、恋瀬川の活発な削り込みによってできた深い谷が、大量の土砂で埋められてできた入り江です。また、沿岸にせまる台地縁辺の崖では、古東京湾がつくり出した砂や泥の地層を見ることができます。
高浜周辺は、常陸国の国府があった石岡への玄関口として栄え、茅葺き屋根の高浜神社は当時の面影を残しています。明治時代以降は、霞ヶ浦の水運の繁栄とともに河岸として栄え、石岡とともに酒や醤油などの醸造業が発展しました。
ジオパーク名:筑波山地域ジオパーク
ジオパーク名(英語表記):Mt. Tsukuba Area Geopark
団体名:筑波山地域ジオパーク推進協議会
構成自治体名:つくば市,石岡市,笠間市,桜川市,土浦市,かすみがうら市
■筑波山地域ジオパーク推進協議会
〒300-4231 茨城県つくば市北条4160番地 つくばジオミュージアム内
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