“ジオパークな旅”―それは一味違った旅のカタチです。その土地ならではのご当地料理や、そこでしか見られない絶景、家族や友人との忘れられないひととき…人それぞれの旅の楽しみ方がある中、ジオパークでオススメする旅は、ちょっと“視点を変えてみる旅”、あるいは“主人公を変えてみる旅”です。

花にも花の、人生がある

山旅の醍醐味の1つといえば、高山のお花畑。

可憐な花を咲かせる高山植物ですが、花が咲いているのは年にわずか数週間。その年その年の雪解けによって開花時季がずれるのはもちろん、花によって、そもそもの開花のタイミングや咲いている場所が異なります。この違いを生み出しているのが、山の環境―地形や土、風や雪なのです。

同じ花でも、その美しさだけでなく、“視点を変えて”その生育環境に思いを馳せてみると、花それぞれの波乱に満ちた人生が見えてくるのではないでしょうか?

高山植物と登山客(アポイ岳ユネスコ世界ジオパーク)。

仏像の出身地は?

京都や奈良の旅の定番といえば、神社仏閣巡り。中でも奈良の大仏は、定番中の定番といえます。建立当時は金色に輝いていたといいますが、最も多く使われている材料は銅で、その産地の1つが山口県の長登銅山跡です。秋吉台の大地をつくり上げている石灰岩とマグマが地中で接して化学反応を起こすことで生まれました。

一方で、地元で材料が調達された仏像もあります。大分県では、阿蘇山の噴火による火砕流が冷えて固まった溶結凝灰岩といわれる岩石に、多くの磨崖仏(石仏)が彫られています。

同じ仏像でも、その造形の美しさや人々の願いだけでなく、“主人公を変えて”その材料に考えを巡らせてみると、新たな物語が浮かび上がってくるのではないでしょうか?

菅尾磨崖仏(おおいた豊後大野ジオパーク)。

日本地図を逆さにすると

日常生活でよく目にする日本地図。普段、私たちは「桜前線が北上」というように、北を上に、南を下に見ています。ではこれを、“視点を変えて”上下逆さにしてみたら、何が見えてくるでしょうか?

日本海は巨大な浅い湖のように見え、その奥の太平洋沖には急激に海が深くなる海溝が見られます。こうしてみると、日本列島はアジア大陸と同じ一続きの台の上に載っている、切れ端のようにも見えてきます。

日本列島とアジア大陸、日本海の位置。
GEBCO Compilation Group (2020) GEBCO 2020 Grid (doi:10.5285/a29c5465-b138-234d-e053-6c86abc040b9)を加工して作成。

石とか土とか、普段はあまり気に留めないものにも目を向けてみると、同じ旅でも違った風景が見えてきます。“ジオパークな旅”―それは“見慣れた風景”を“ここにしかない風景”に転換する旅。

ではそんな、“ここにしかない風景”を見つけるには、どうすればよいでしょうか?