地球規模のダイナミックな変動によって地下深くから現れた「かんらん岩」、それがアポイ岳を形づくりました。アポイ岳ジオパークは、この大地と自然と人々をつなぐ物語の舞台です。
日高山脈は約1,300万年前に起きた、2つの大陸プレートの衝突によってできました。その衝突の際、地殻の下にあるマントルの一部が突き上げられるように地上に現れたのが「幌満かんらん岩体」、つまりアポイ岳です。アポイ岳周辺には、地球深部のマントルの情報をそのまま持っている新鮮なかんらん岩が広がっており、世界的に注目されています。また、アポイ岳ジオパークには、プレート衝突の現場やマグマが冷えて固まった奇岩類、はるか南の海から運ばれてきた岩石など、大地の変動を学び楽しむための多彩な要素がたくさんあります。
アポイ岳では、その特殊な土壌・気象・地理的環境によって、低標高ながら高山植生が成立しています。ここには、ヒダカソウなどのここにしかない花を含む多くの固有植物が生育しており、アポイ岳の高山植物群落は国の特別天然記念物にも指定されています。
また、高山植物だけでなく、固有種のカタツムリ「アポイマイマイ」のほか、日本ではここにしか生息しない蝶「ヒメチャマダラセセリ」や氷河期の遺存種「エゾナキウサギ」など、アポイ岳ジオパークには、自然環境を学び楽しむための多様で貴重な生態系が残されています。
様似海岸の親子岩やソビラ岩、エンルム岬などの奇岩類が織りなす風光明媚な景観は、日高路の海岸線の中でも特に際立っています。様似(アポイ岳ジオパーク)には、これら奇岩類にまつわる先住民族アイヌの数々の言い伝えが残されています。
また、エンルム岬は、風をやわらげ出船入船を見守るその地形から天然の良港として古くから利用され、様似は江戸時代から北前船流通の要衝として発展してきました。アポイ岳ジオパークには、自然と人間社会の共生を学び楽しむための、アポイを仰ぎ海とともに生きてきた人々の歴史が息づいています。
アポイ岳の東方に、約8㎞続くかんらん岩の峡谷が幌満峡です。渓谷には、原生的な針広混交林が 広がり、キタゴヨウ北限自生地があります。秋には美しい紅葉が見られ、地形を利用し昭和初期から稼働する水力発電所があります。
幌満峡は、アポイ岳とともに約10㎞四方の「幌満かんらん岩体」の中にあり、地下深くのマントルで起きたできごとを知ることのできる場所です。
このサイトには、かんらん岩の露頭があります。赤茶けた岩肌の中に、オリーブグリーン色をした、かんらん岩の主要な鉱物「かんらん石(オリビン)」などの鉱物が見られますので、ルーペで観察してみましょう。
地下深くのマントルからやってきたかんらん岩がつくる「花の山・アポイ岳」。
アポイの名は、アイヌ語の「アペ(火)・オイ(多い所)・ヌプリ(山)」が略されたもので、「大火を焚いた山」という意味。昔、アイヌの人々がこの山で火を焚き、鹿の豊猟をカムイ(神)に祈ったという伝説に由来しています。
5合目山小屋から上は、ゴツゴツとしたかんらん岩の露地にハイマツ帯が広がり、色とりどりの高山植物も目立ちます。天気が良ければ太平洋や日高山脈のパノラマも楽しめるでしょう。
しかし、山頂にはダケカンバ林が。頂上付近になぜこんな樹林が発達しているのかは謎です。
アポイ山塊の西方にはなだらかな丘陵地が広がり、海岸線には、大小いくつもの岩山が並び、この地域の景観的特徴を表しています。この独特の景観には、何百年も自然と共生してきたアイヌの人々の伝説が数多く残されています。
エンルム岬は、かつての島が砂州の発達で陸続きとなった陸繋島。この地形が天然の良港をかたちづくり、エンルム岬の麓に1799年、江戸幕府がシャマニ会所を置いたことが様似の黎明となっています。この展望台からは、アポイ岳ジオパークが一望できます。
展望台からの眺めはもちろん、岬の裏側の崖にある、マグマが冷えて固まった「板状節理」は、一見の価値が。夏の晴れた日、崖下では特産の「昆布」を干す光景が見られます。
アポイ岳の山裾が太平洋に落ち込み、約7kmの断崖絶壁をつくっているのが、日高耶馬渓と呼ばれる海食崖です。
日高耶馬渓は交通の難所であり、断崖上には、約200年前に開削された「様似山道」があります。そして、海岸から順に明治、大正、昭和、平成の4代のトンネルが並び、自然災害と闘い交通を確保してきた歴史がうかがえます。
この辺りは、地質としては日高山脈の一部(日高変成帯)になり、褐色の岩石(片麻岩)の中に緑灰色の岩石(花こう岩類)が入り込んでいる様子が観察できます。
また、良質の日高昆布(ミツイシコンブ)の産地で、昆布採りや昆布干しの風景が見られます。
石灰石加工プラント裏に、石灰岩の旧鉱山が見えます。そこには、泥岩と砂岩の層の中に白っぽい石灰岩が入っている露頭が見られます。
石灰岩は、暖かい海にいるサンゴなどの生物の死がいが海の底に積み重なり、長い年月をかけて固まってできた岩石です。でも、なぜ北海道の冷たい海にはサンゴがいないのに、ここに石灰岩があるのでしょうか。実は、これらは何千kmもはるか南の海から、プレートの動きによってゆっくり運ばれてきたものなのです。
Eエリアは、石灰岩や「チャート」と呼ばれる岩石が見られることから、他のエリアとはまた違った成り立ちでできていることがわかります。
ジオパーク名:アポイ岳ジオパーク
ジオパーク名(英語表記):Mt.Apoi UNESCO Global Geopark
団体名:様似町アポイ岳ジオパーク推進協議会
構成自治体名:北海道様似町
■様似町アポイ岳ジオパーク推進協議会事務局
〒058-8501 北海道様似郡様似町大通1丁目21番地
TEL 0146-36-2120 FAX 0146-36-2662
■ウェブサイト(日本語) アポイ岳ジオパーク
■ウェブサイト(英語) Mt.Apoi UNESCO Global Geopark
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