箱根ジオパークは、神奈川県西部の箱根町・小田原市・真鶴町・湯河原町・南足柄市の2市3町の全域をエリアとしています。東京都心からわずか90kmに位置し、箱根火山の恵みである美しい景観と豊かな自然、多様な泉質の温泉に恵まれた国際観光地で、年間3,000万人の観光客が訪れています。
箱根火山は、40万年に及ぶ形成史をもち、様々な岩石や火山地形を観察することができ、雄大な風景を楽しみつつ、火山の形成を学ぶことができます。箱根火山は、伊豆から丹沢山地に続く南北にのびる天然の障壁となっており、起伏に富ん だ地形には、天然記念物に指定されている動植物が数多く生息しています。
南北の連なる天然の障壁は、日本を文化的・政治的に大きく東西に分けていましたが、日本の歴史を形作ってきた東海道は、東西を結ぶ役割を果たしてきました。小田原城や関所など東西の摩擦や緊張を今に伝える歴史文化遺産、石丁場跡を代表する地質資源を活かした経済活動の現場などが見どころです。
2015年6月29日ごく小規模な噴火が発生しました。大涌谷は、およそ3000年前に神山が大きく崩れてできました。大涌谷の正面にそびえる三角形にとがった山は、大崩れの後に始まった火山活動でできた冠ヶ岳です。大涌谷の周辺では、火山ガスを含んだ噴気に耐える植物が生えています。また、噴気を利用して作られた温泉は、周辺の宿に供給されています。大涌谷の温泉でしかできない黒たまごは、観光客の人気の的でもあります。
駒ヶ岳は、箱根火山の中央火口丘の一つで、その標高は1356mあります。山麓には、ハコネコメツツジなど箱根を代表する植物がみられます。地形をよくみると、何枚もの溶岩が流れたことがわかり、成層火山であることがわかります。頂上付近には、「馬降石」や「馬乗石」などの古事記に残る伝説に基づく遺跡があり、神山と共に古くから信仰を集めていた霊地でした。現在は、奈良時代に萬巻上人によって開かれた箱根神社の元宮が祀られています。晴れた日には、富士山や駿河湾、相模湾と湘南海岸から三浦半島、さらに房総半島まで見渡すことができます。
仙石原湿原は、箱根火山のカルデラ内の北部に広がる湿原です。かつてこの地域は、箱根外輪山のなかにできた仙石原湖の一部でした。約3000年前、中央火口丘である神山の山体が崩壊し、大量の土砂が湖に流れ込みました。さらに、神山の崩壊部に上昇してきた冠ヶ岳が繰り返し火砕流を流し、その土砂も湖に流れ込みました。このようにして湖が埋め立てられ、現在の仙石原湿原ができました。弥生時代中期には、人が住み始めました。湿原のなかにある箱根湿生花園は、日本の各地の湿地帯をはじめ、草原や林、高山植物など約1700種の植物が四季折々に花を咲かせています。
箱根外輪山の南東に位置する絶景ポイント。北側の展望台からは、外輪山の山々、カルデラ内の芦ノ湖や後期中央火口丘の駒ヶ岳、二子山、前期中央火口丘の屏風山や浅間山が一望のもとに見渡せるだけでなく、天気の良い日は背後に富士山、遠く南アルプスの山々まで見通すことが出来ます。南側の展望台からは、伊豆の天城山、大室山、伊豆七島の大島、神津島などが見えます。
精進池周辺は、中世の箱根越えとして利用された湯坂道が通るが、各所に噴気が立ち上る荒涼たる風景であったことから、人々から地獄と恐れられました。それゆえこの周辺には地蔵信仰に基づく石仏や石塔が数多く建てられ祀られました。石仏や石塔の材料となった溶岩は、後期中央火口丘の上二子山もしくは駒ヶ岳の溶岩です。元箱根石仏群が建立されたのが、13世紀末から14世紀初頭で、これ以降の鎌倉をはじめとする南関東の石造物(特に五輪塔や宝篋印塔などで細かな細工を要する石塔)には、好んで後期中央火口丘の溶岩を使う傾向が見られます。
小田原城は、伊勢新九郎(北条早雲)以後、5代、約100年にわたって北条氏の本拠となる城でした。当時の城では石垣をほとんど用いず、関東ローム層を掘りぬいた空堀と土塁で構成されていました。北条氏が豊臣秀吉の小田原攻めで滅亡し、江戸時代を迎えると、小田原城は箱根火山の安山岩で築かれた石垣を備える近世の城郭として生まれ変わりました。
小田原用水は箱根板橋の取水口から早川の水を小田原城下に引いた用水で、戦国時代の終わり頃には既に存在していたことが判明しています。用水のルートは小田原市内の沖積低地の自然の勾配を巧みに利用したものと推定されています。
1590年(天正18年)、小田原城に立て籠もる北条氏を攻めるため、箱根外輪山外周の尾根上に豊臣秀吉が築いた総石垣の城で、国の指定史跡となっています。石垣は小田原城とは異なり、加工を加えていない安山岩を用いた野面(のづら)積みという積み方。石垣に使われている石は、周辺の山を構成する箱根火山の溶岩です。石垣山一夜城からは、小田原市の市街地が広がる足柄平野から大磯丘陵、その境界に位置すると考えられている国府津-松田断層の地形が一望できます。
真鶴半島の一番先には、三つの巨大な岩が突き出ています。三つの岩があるので、三ツ石海岸と呼ばれています。この三つの大きな岩をつくるのは、真鶴半島とおなじく、約15万年前にできた溶岩です。海面が大きくさがる大潮の干潮時には、この大岩まで歩いて渡ることができます。 半島の先や三ツ石のまわりの磯には、神奈川県の天然記念物に指定されているウメボシイソギンチャクやサンゴイソギンチャクなど珍しい生き物がいます。大潮の干潮時には、貝やエビ、カニ、魚など様々な磯の生物も観察することができます。
幕山は、約15万年前に噴火した火山の溶岩が冷えて固まってできた山です。山の中腹には、大きな柱のような形をした岩壁が見えます。これらは、柱状節理とよばれるもので、溶岩が冷えて固まるときにできる形状です。普通は六角柱状をしていることが多いのですが、幕山のものは四角柱状のものが多くあります。幕山の溶岩をよく見ると、灰色と白色の縞模様があることがわかります。これは、二つのマグマがまじりあってできた溶岩であることを示しています。現在では、約4000本の梅の木が植えられている湯河原梅林となっています。
湯河原町の奥湯河原にある、落差15mの滝です。滝をつくる崖は、湯河原火山から噴出した溶岩や火山灰が固まってできた岩石でできています。湯河原火山の岩石の中には、沸石と呼ばれる白くてもろい鉱物が産出します。この不動滝で発見された新しい種類の沸石に、湯河原の地名がつけられた湯河原沸石があります。しかし、現在では見つからなくなりました。滝の左側には身代わり稲荷が、右側には出世大黒尊が祀られています。滝の入り口にあるお茶屋さんで、一休みもできます。
矢倉岳は、約115万年前に足柄層へ貫入したマグマが地下深くで冷え固まった深成岩体です。その後、プレートの圧力により標高870mまで隆起した、世界的にも極めて新しい岩体で石英閃緑岩からなります。その特徴的な形状が、足柄峠を見張る櫓(やぐら)のようであることがその名の由来と言われ、足柄道におけるランドマークとしても機能していたと考えられています。
夕日の滝断層の活動により箱根火山堆積物と足柄層群が接し、箱根外輪山を水源とする内川が、下流の軟質な足柄層群を浸食してこの滝を形成しました。付近の露頭ではほぼ垂直になった足柄層を観察でき、大地の変動を体感することができます。また、この地域には金太郎伝説が残り、「金太郎の遊び石」と呼ばれる金時山起源の凝灰(ぎょうかい)岩質巨岩もあります。
ジオパーク名:箱根ジオパーク
ジオパーク名(英語表記):Hakone Geopark
団体名:箱根ジオパーク推進協議会
構成自治体名:神奈川県 箱根町、小田原市、真鶴町、湯河原町、南足柄市
■箱根ジオパーク推進協議会 事務局(箱根町 企画課 ジオパーク推進室)
〒250-0398 神奈川県足柄下郡箱根町湯本256 箱根町企画観光部企画課ジオパーク推進室内
TEL 0460-85-9560 FAX 0460-85-7577
■ウェブサイト 箱根ジオパーク