38億年の大地の歴史

立山黒部ジオパークの大地の記憶は、エリア内の花こう岩から発見された日本一古い鉱物であるジルコンの年代―約38億年前―にさかのぼります。38億年の歴史を振り返ると、大陸が分裂・接合を繰り返していた時代、大陸の縁で恐竜が大地を歩いていた時代、日本海が作られた時代、北アルプスが誕生する時代という4つの大きな大地の記憶が蘇ります。

高低差4,000m

この大地の歴史の中で作られてきた3,000m級の北アルプスからは、国内屈指の急流河川が幾筋も流れ下り、下流には広大な扇状地や沖積平野が拡がります。地形の急峻さは富山湾でも見られ、海岸から沖にむかって急に深くなり、最も深い部分は水深1,000mを越えています。そびえ立つ山々、扇状地、深い富山湾と高低差4,000mの空間が作られ、この舞台で人と自然がかかわり合いながら暮らしています。

大陸からの冷たい季節風は日本海で水分を供給されることにより、立山連峰が世界有数の豪雪地帯となっています。大量の雪を背景に、山岳部には氷河が今なお残り、夏でも水が豊富な扇状地には水田が発達します。扇状地の末端には湧水群が広がり、独特の水の文化が生まれました。海底からの湧水は埋没林や海底林を保つとともに、多くの魚介を育む栄養塩を富山湾に供給しています。このダイナミックな水循環をこの地域で体感できます。

主な見どころ・
おすすめジオサイト

石倉町の延命地蔵尊と湧水

 富山市内を流れる「いたち川」沿いには、延命地蔵尊が幾つも祀られています。江戸時代、安政の大地震に伴って立山カルデラで崩壊した土砂は自然のダムをつくり、その決壊により常願寺川からの濁流が富山市内を襲いました。地蔵菩薩のお告げを受けて川底に沈む地蔵を供養したところ、洪水による疫病に苦しむ人々が快復したことから、そのご加護に感謝し地蔵堂を建てたといわれています。常願寺川扇状地の末端部にあたり、川沿いの地蔵堂の脇には、平成の名水百選にも選定されている地下水が湧きだしています。

石倉町の延命地蔵尊
アクセス情報
富山地方鉄道バス中教院前バス停から徒歩5分
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立山カルデラ

 立山(弥陀ヶ原)火山の脆弱な地質の山体が著しい風化と侵食の作用により作り出された侵食カルデラで、常願寺川の扇状地を成した主要な土砂生産源のひとつです。1858(安政5)年の飛越地震では、地形の一部を構成していた大鳶山や小鳶山が大規模に崩壊し、約4億m3ともいわれる土砂が発生。常願寺川下流域は度重なる水害に悩まされるようになりました。花こう岩体である立山(雄山)などが作り出す地形とは表情が一変する「もうひとつの立山」をみられる場所です。立山カルデラ砂防博物館の体験学習会で見学することができます。日本の地質百選。

アクセス情報
立山高原バス弥陀ヶ原バス停から徒歩20分
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立山の室堂平

 立山の室堂平は、南側に広がる現在の立山カルデラ内に存在していた火口から流れてきた溶岩によってできた溶岩台地です。その最後は台地上とその周辺でマグマ水蒸気爆発を繰り返し、ミクリガ池やミドリガ池などの地形を形成しました。今なお噴気活動がある地獄谷は、7世紀末頃まで火口湖として存在し、一帯には硫黄堆積物による湖成層が分布しています。室堂平では、春には高さ20mに達する雪の大谷、夏にはチングルマやハクサンイチゲなどの高山植物を見ることができ、氷期の遺存種であるニホンライチョウなど貴重な生物も多数生息しています。

アクセス情報
立山高原バス室堂ターミナルから徒歩1分
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大岩山日石寺

 真言密宗の大本山である大岩山日石寺は、行基が開いたと言われている寺院で、古くから立山の山岳信仰との関わりが深かったと言われています。本堂に鎮座する磨崖仏(まがいぶつ)は中央の不動明王と左右の童子立像などが凝灰岩に彫られています。この凝灰岩は、近くの千巌渓にも見られ、火山灰が固まった約1千万年前の岩で、大陸から分離し現在の日本列島の位置に移動したころにつくられた岩石です。加工しやすい岩石で、彫刻美としての磨崖仏と自然美としての千巌渓を感じることができます。

アクセス情報
富山地方鉄道上市駅より車で約10分 上市駅より町営バスあり
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竹内天神堂古墳

 竹内天神堂古墳は、古墳時代前期(4世紀前半)に造られた全長約38mの前方後方墳です。他にも、富山平野を流れる白岩川周辺の微高地に大型の古墳が集中しています。古墳群は、前期から中期の県内での一大勢力の存在を示すもので、竹内天神堂古墳の被葬者は白岩川水系の平野を勢力基盤としてこの地域で最初に台頭した首長で、周辺の首長系譜のさきがけとなった人物と推測されています。
若王子塚古墳や稚子塚古墳(ちごづかこふん)などは、これに続く権力者のものと推測されています。白岩川流域の大勢力の成立過程を解明する上で貴重な遺産となっています。

アクセス情報
富山地方鉄道越中舟橋駅から徒歩2分
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ホタルイカ群遊海面

 富山湾には、毎年春になると、産卵のためにメスのホタルイカが大群で来遊します。特に湾東部地域では海岸近くで産卵し、中には波に打ち上げられるホタルイカも現れます。これを地元では「ホタルイカの身投げ」と呼び、儚く幻想的な光の世界を体験しに多くの人が夜の海岸を訪れています。湾東部は海底が岸近くから急激に深くなっており、深海域から産卵のために浮上してきたホタルイカが岸近くまで来遊する理由のひとつと考えられています。富山市の常願寺川右岸から滑川市、魚津市の魚津港付近までの海面は、「ホタルイカ群遊海面」として特別天然記念物に指定されています。

アクセス情報
あいの風とやま鉄道滑川駅から徒歩8分
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魚津埋没林

 魚津埋没林は片貝川扇状地の扇端部である魚津港一帯から、1930(昭和5)年の魚津港改修工事の際に発見された埋没林です。この埋没林は、現在の海水準よりも数十cm~2m程度下位から発見されており、約2000年前の冷涼な気候下で形成された森林跡と考えられ、富山湾周辺の最終氷期以降の海水準変動を示す証拠のひとつとなっています。さらに、構成する樹種などから、魚津埋没林は扇端部湧水地に成立したスギ主体の原生林だったと考えられています。同所は、特別天然記念物及び日本地質百選に選ばれており、博物館として埋没林を実地で見学することができます。

アクセス情報
あいの風とやま鉄道魚津駅または富山地方鉄道新魚津駅から徒歩20分、車で5分
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生地の清水

 漁港の街として栄えてきた生地地区は、急流河川の黒部川がつくる扇状地の扇端部に位置し、至る所で地下水が湧いています。地元では「清水(しょうず)」と呼び、共同洗い場として地域住民の方々が管理しながら飲み水、洗濯、炊事、冷蔵場所として昔から住民の生活には欠かせない生活用水であり、集いの場所となっています。この他に750箇所あまりの掘り抜き井戸があり、湧水は杉沢の沢スギ等と共に環境省選定「名水百選」に黒部川扇状地湧水群として選ばれています。鮮魚コーナーや新鮮な魚料理を頂ける道の駅「生地」やガイドによるまち歩きも楽しむことができます。

アクセス情報
あいの風とやま鉄道生地駅から徒歩15分、車で5分
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杉沢の沢スギ

 海に突き出た黒部川扇状地の末端部の海岸に近い自然湧水帯に生育するスギ林で、かつての川筋とも言われ、周りよりも低い沢に生育しています。木材として、燃料としてスギを利用するために、人と自然が創り出した植生であり、扇状地の原風景を感じることが出来ます。暖温帯の植物の中に、山地性の植物や、湿性の植物が生育しており、国の天然記念物に指定されています。黒部川の右岸には130ヘクタールのスギ林が広がっていましたが、昭和30年代からの圃場整備によりほとんどが姿を消し、現在はわずか2.67ヘクタールの林が1つ残っているだけです。全国名水百選。

アクセス情報
あいの風とやま鉄道入善駅から車で8分
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ヒスイ海岸

 ヒスイ海岸は朝日町の北東部に位置する約4kmのエメラルドグリーンの美しい海岸で、日本の渚百選にも選ばれています。海岸に出ると、ヒスイをはじめとする多くの種類の岩石の礫を拾うことができ、石の学習には最適な場所となっています。ヒスイは、隣接する糸魚川ユネスコ世界ジオパークで産出するものが流れ着いたものと推測されており、近くの浜山玉つくり遺跡は古墳時代中期の遺跡で、ヒスイの工房跡やヒスイの勾玉や滑石の管玉が出土しています。また、朝日町埋蔵文化財保存活用施設まいぶんKANでは、ヒスイ文化を残す遺跡や縄文時代の遺跡の展示を見ることができます。

アクセス情報
あいの風とやま鉄道越中宮崎駅から徒歩1分
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基本情報

ジオパーク名:立山黒部ジオパーク

ジオパーク名(英語表記):Tateyama Kurobe Geopark

団体名:一般社団法人立山黒部ジオパーク協会

構成自治体名

富山県富山市、魚津市、滑川市、黒部市、舟橋村、上市町、立山町、入善町、朝日町

お問合せ先

■一般社団法人立山黒部ジオパーク協会事務局

〒930-0856 富山県富山市牛島新町5-5 タワー111ビル 1階

TEL 076-431-2089 FAX 076-482-3204

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