3,000m級の山脈、今ももり上がる山々

3,000mを越える山を13座も抱え、南北100km、東西50kmに及ぶ広大な南アルプス。南アルプスの大部分を作っているのは、大昔の海底で作られた岩石です。やわらかく削られやすいため、どっしりとした緩やかな山容の山が多く見られます。200万年前ころから隆起を始めた南アルプスは、年間4mmという世界でもまれに見る速さで今でも少しずつ高くなり、多量の雨に侵食されて深い谷が刻まれています。

3,000m級の山脈、今ももり上がる山々

高い山、深い谷にくらす多様な生き物

南アルプスには様々な種類の岩石が細長く帯状に分布するので、石灰岩地にはシナノコザクラをはじめとした石灰岩地特有の植物が生えるなど、岩石の種類に応じて多様な植物が見られます。標高が高いため緯度の割に寒冷な南アルプスは、氷期の生き残りであるライチョウやハイマツなどの、世界の分布の南限です。高山帯にはお花畑が広がり、1,000を超える固有種を含むたくさんの生き物がくらしています。

ライチョウ

中央構造線と街道

南アルプスジオパークには、南北方向にまっすぐな谷が走っています。この谷は、断層のずれ動きで砕かれたもろい岩石が川に削られてできたものです。関東から九州まで続く日本最大級のこの断層、中央構造線をいくつかの露頭で観察できます。

また、中央構造線に沿ってできたまっすぐな谷は歩きやすく、古来多くの人が行きかう街道となり、歴史や文化がうまれました。街道沿いの旧跡も南アルプスジオパークの見どころです。

安康露頭

主な見どころ・
おすすめジオサイト

中央構造線 ─地下深部と大地の歴史の物語─

中央構造線は関東から九州まで続く大断層です。断層運動による移動距離は200km以上と言われ、最大2,000kmとも推定されています。この大規模な断層運動により二つの変成帯の間にあった中間地帯は失われ、現在は、中央構造線を境界として、二つの変成帯が接しています。

次の露頭では、中央構造線の断層の様子が観察できます。
・板山露頭(伊那市高遠町)
・溝口露頭(伊那市長谷)
・北川露頭(大鹿村)
・安康露頭(大鹿村)
・程野露頭(飯田市上村)

溝口露頭
安康露頭
程野露頭
アクセス情報
板山露頭、溝口露頭以外は公共交通機関でのアクセスなし
詳しくはお問い合わせください。

入笠山

南アルプスの北端に位置する入笠山(1,955m)の山頂は、360度の大パノラマ。足元には緑色岩、眼下には日本を横断する糸魚川-静岡構造線、八ヶ岳からの韮崎岩砕流の痕跡などが観察できます。入笠山山麓にある入笠湿原(1,730m)は、春から秋にかけて百数十種類の山野草が咲き誇り、日本スズランの群生が見事。大阿原湿原(1,810m)はチャートの巨岩が転がり、この湿原を源流とするテイ沢は、コケと清流が美しい散策路になっています。

入笠山山頂"
入笠湿原
テイ沢
アクセス情報
JR中央線富士見駅からシャトルバス(10分)で、または中央自動車道諏訪南ICから車(7分)で富士見パノラマリゾートへ。ゴンドラ山頂駅までゴンドラで10分

小黒川沿いの戸台層 -アンモナイトと不思議な礫層-

伊那市長谷の戸台層は、サンカクガイやアンモナイトの化石の産地です。1億2000万年前の海の底に棲んでいた生物の化石が、南アルプスの古い岩石にはさまれて残りました。戸台の化石資料室では、戸台層より採集されたサンカクガイやアンモナイトの化石標本が展示されています。

1986年に結成された戸台の化石保存会は、毎年、学習会を開催しており、多くの家族連れが集まっています。学習会で採集された標本は、採集者が整理し、化石資料室に保存されます。

アンモナイト化石
戸台の化石学習会の様子
戸台の化石資料室
アクセス情報
JR飯田線伊那市駅前からJRバスで高遠駅へ。長谷循環バスに乗り換えて「長谷公民館(戸台化石資料室)」と降車場所を指定(フリー降車区間)

南アルプス横断ルートⅠ -南アルプスジオライン (南アルプス林道長野県側)-

伊那市長谷の南アルプス林道からは、仏像構造線の露頭、秩父帯石灰岩でできた幕岩、三波川帯の蛇紋岩である鷹岩などが観察できます。

幕岩は、関東から沖縄本島へ続く秩父帯の石灰岩が戸台川に削られ、岩壁となって露出したものです。約1500万年前から現在にかけて、丹沢や伊豆半島などの古伊豆諸島がプレートの動きにのって北西へ移動し、南アルプスと関東山地の間へ次々に衝突してきました。そのため、南アルプスは逆「く」の字型に折れ曲がり、幕岩のある南アルプス北部では、西傾斜であった地層が、東傾斜になったと考えられています。

仏像構造線唐沢露頭
幕岩
鷹岩の蛇紋岩
アクセス情報
JR飯田線伊那市駅前からJRバスで高遠駅へ。長谷循環バスに乗り換えて仙流荘で下車し、南アルプス林道バス乗車

南アルプス横断ルートⅡ -鳥倉林道~塩見岳-

大鹿村の塩見岳登山口から山頂まで、アジア大陸に沈み込んだ海洋プレートから剥ぎ取られたさまざまな岩石(付加体)の露出が観察できます。

鳥倉林道の夕立神展望台がある鳥倉山は、ジュラ紀の太平洋にあった「みかぶ海台」と名付けられた巨大な熔岩台地が付加した海洋玄武岩(緑色岩)でできています。

また、塩見小屋から塩見岳山頂では、遠洋の深海底に石英質の殻をもつ放散虫の遺骸が堆積してできたチャートが分布しています。微量の酸化鉄が混ざると赤く染まり、赤色チャートと呼ばれ、赤石山脈という名前のもとになった岩石です。

夕立神展望台からの眺め(赤石岳)
夕立神展望台の海洋玄武岩
塩見岳山頂付近の赤色チャート
アクセス情報
夏休み期間中のみ、JR飯田線伊那大島駅より塩見岳鳥倉登山口まで伊那バスがバス運行、1時間50分

南アルプス山麓周遊ルート ─しらびそ高原~下栗の里─

三遠南信道の矢筈トンネル程野口から遠山併用林道を上り、しらびそ高原を通り下栗の里へ下ります。そして再び国道152号を通って程野口まで周遊することができます。このルート沿いには、活断層としての中央構造線程野公園や南アルプスを眺望するしらびそ峠、ハイランドしらびそ展示室、御池山隕石クレーター、南アルプスパノラマ展望道路、ビューポイント下栗の里、聖岳から流れ下る遠山川渓谷の雄大な隆起侵食の地形、海洋地層の標本である中郷流宮岩など多様なジオポイントを楽しむ事ができます。

このルートは飯田市街地側からも浜松市側からも入ることができます。

しらびそ高原
下栗の里
中郷流宮岩
アクセス情報
中央自動車道飯田ICから矢筈トンネル経由、車で約40分(程野露頭)
しらびそ高原、御池山隕石クレーターについては、冬期(11月上旬~4月中旬)は通行止めのためアクセス不可

遠山大地変と埋没林 -大地のダイナミズムと災害の継承-

飯田市遠山では、西暦714年と1718年に大きな地震に見舞われ、山が崩れて遠山川がせき止められました。714年の地変は規模が大きかったため、地震で崩れた池口川左岸の崩壊地(日陰山)、池口川や遠山川のせき止め、せき止め湖にできた埋没林などの痕跡を、各地で見ることができます。埋没した樹木には大木が多く、特にヒノキが多く見つかりました。埋没林は、南信濃の大島・畑上・大渕付近で観察できます。また、埋没していた樹木の一部は、南信濃自治振興センターや旧木沢小学校、梨元ていしゃ場で見ることができます。

埋没林
南信濃自治振興センターの埋没林展示
日陰山
アクセス情報
JR飯田線平岡駅または飯田駅より信南交通バス和田方面行き乗車。または中央自動車道飯田ICから矢筈トンネル経由、車で約50分

御池山隕石クレーター

飯田市上村しらびそ高原の一角に隕石クレーターがあります。クレーターの大きさは直径約900mで、現在はその40%ほどが残っています。このクレーターは、およそ2~3万年前に直径約45mの小惑星が衝突したためにできたと推定されています。周囲の岩盤の石英には、この時の衝撃によってできた面状微細変形組織が発見されています。

クレーターの内部を南北に横切るように南アルプスエコーラインが通っているので、車道沿いで地形や変形した岩盤を見ることができます。また、クレーター外縁にそって御池山山頂まで遊歩道がついています。ハイランドしらびそにはクレーターの展示があります。

展望台から御池山隕石クレーターの全景
御池山頂上からみたクレーター外縁の地形
アクセス情報
中央自動車道飯田ICから矢筈トンネル経由、車で約1時間。冬期(11月上旬~4月中旬)は通行止めのためアクセス不可

基本情報

ジオパーク名:南アルプス(中央構造線エリア)ジオパーク

ジオパーク名(英語表記):Minami-Alps (MTL Area) Geopark

団体名:南アルプス(中央構造線エリア)ジオパーク協議会

構成自治体名:長野県飯田市、伊那市、大鹿村(2市1村)

お問合せ先

■南アルプス(中央構造線エリア)ジオパーク協議会

〒396-8617 長野県伊那市下新田3050 伊那市 商工観光部観光課 エコパーク・ジオパーク推進係

TEL 0265-96-8147 FAX 0265-78-4131

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