Volume 6 Number 1

ONLINE ISSN 2423-9135

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編集委員会

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特集:ジオ・エコ・ヒト -なぜジオパークで生態学?

●[記事]日本ジオパーク全国大会における分科会「ジオ・エコ・ヒト -なぜジオパークで生態学?」開催の経緯とねらい

平田 和彦・中村 真介・藤井 利衣子・加藤 雄也・福井 智香子

2008年に日本に最初のジオパークが誕生してから約15年が経過した.当初はジオパークと言えば地質や地形に偏ったイメージが定着していたが,認定されるジオパーク地域が増え,活動が深化するにつれて,大地だけでなくそこに根差した生態系(e.g. 平田, 2016;2023)や文化(e.g. 五十嵐, 2016)などにも目が向けられるようになってきた.

第13回日本ジオパーク全国大会 in 関東の分科会では,どの地域でどのような人がどのような活動を展開し,どのような悩みを抱え,どのような理想を描いているのかを参加者が互いに知ることで交流・議論を促し,そのきっかけを作るという目的は果たせたと筆者らは考えている(平田ほか, 2024a).さらに多くの地域・人々に生態学WGの活動や本分科会の成果を発信し,ジオパークにおける「エコ」に関する資源の保全と活用を促すことを目的として,ここに特集を組み,本分科会の内容を記録する.

ジオパークと地域資源 vol.6 no.1 pp.1-3
2024.08.29公開

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●[エッセイ]ジオパークでこそ生態学!

平田 和彦

日本生態学会が編集する「生態学事典」(巌佐ほか, 2003)では,生態学は「生物の生活に関する科学」や「生物と環境との関係を扱う科学」と説明されている.また「生態学は,地球化学や水文学など物質循環の化学,また気象学などをふくむ地球科学と近い関係をもち,地球環境変化の研究において,さまざまな形での共同研究がすすめられている」と言及されている.

第13回日本ジオパーク全国大会で日本ジオパークネットワーク生態学ワーキンググループが企画運営した分科会「ジオ・エコ・ヒト -なぜジオパークで生態学?」(平田ほか, 2024a)のテーマにある「ジオ・エコ・ヒト」は,ジオパークを構成するそれぞれの要素のつながりを強く意識させるフレーズとしてよく聞かれるが,「エコ」を通じて「ジオ」と「ヒト」とのつながりを紐解くその考え方は,非常に生態学的である.

本稿は,本分科会において,後に続く話題提供や議論(平田ほか, 2024bを参照)の土台を築くことを目的に導入として話した内容,すなわちジオパークで生態学的な視野を持つ意義を示すものである.特に,日本の地球科学的な特徴を踏まえ,「ジオ・エコ・ヒト」を実感させる島国の強みとプレート境界に育まれた生物多様性の高さに着目し,日本のジオパークが世界に果たせると筆者が期待する役割を述べる.

ジオパークと地域資源 vol.6 no.1 pp.4-6
2024.08.29公開

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●[資料]日本ジオパークネットワーク生態学ワーキンググループの活動 -これまでのポスター発表を中心に

藤井 利衣子

日本ジオパークネットワークのワーキンググループのひとつ,生態学ワーキンググループの活動を紹介する.2017年3月の設立以来,メンバー間での情報交換や議論,整理した情報や活動状況の発信に努めてきた.その中で大きな活動として挙げられるのは,2019年と2020年の2回のポスター発表である.ポスターでは,日本ジオパークの現地審査報告書等に出現する「生態資源」に関する単語を抽出し,評価別にポジティブ・ネガティブ・その他の3つに分類して,その内容と傾向を報告した.得られた主な結果は以下のとおりである.(1)ポジティブとネガティブとで,抽出された単語に目立った違いは見られなかった.(2)審査1件あたりの抽出単語数に,目立った増減傾向は見られなかった.(3)生態資源に関する単語は,初めての審査よりも2回目以降の審査で出現頻度が高かった.(4)ジオパーク認定見送り・取消しの場合の審査報告書等では,認定・再認定・条件付再認定の場合と比較して生態資源に関するポジティブな記述が少なかった.生態学WGでは,ジオパークにおける生態資源の保全と活用を促す一助になるよう,今後も活動を続けていく.

ジオパークと地域資源 vol.6 no.1 pp.7-9
2024.08.29公開

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●[資料]日本のジオパークにおける「エコ」の捉え方 -ジオパークにおける自然遺産の保護へ向けて-

中村 真介

日本のジオパークでは,「ジオ」(地質遺産)・「エコ」(地質遺産以外の自然遺産.以下,「自然遺産」)・「ヒト」(文化遺産)の3つの要素のつながりを解き明かす重要性が訴えられてきたものの,そのうち「エコ」の理解は進んでいない.そこで,日本のジオパークにおける「エコ」の捉え方を整理し,「ジオ」と「エコ」の差異や関連性を明らかにした.日本のジオパークでは,例えばジオサイト・エコサイト・文化サイトのように3要素が並列に語られるが,ユネスコ世界ジオパークでは地質遺産が第一に掲げられ,自然遺産や文化遺産はそれに従属するものと位置づけられる.また,地質遺産では「点」による保護が,自然遺産では「面」による保護が採られる傾向があり,後者ではゾーニングが特徴として挙げられる.両者の間には生命の有無や再生産速度などの根本的な差異が認められるものの,両者は互いに関連し合っており,だからこそユネスコ世界ジオパークでは地質遺産だけでなく自然遺産も重視している.日本のジオパークにおける自然遺産の保護に向けてはさらなる議論の積み重ねが必要であり,生態学やその関連分野を専門とするジオパーク専門員の活躍が期待される.

ジオパークと地域資源 vol.6 no.1 pp.10-15
2024.08.29公開

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●[資料]自然遺産を守るための戦略の1つ:三好ジオパーク構想のエコサイトの設定

福井 智香子

ジオパークでは,学術的に重要な価値を保有するがゆえに保全を要する遺産のある場所を「サイト」としている.このサイトには,地球科学的な価値以外にも生物学的,人文科学的な価値を有している場合にも設定できるが,サイトを設定する際の指針や基準については,特に生物学分野において議論が十分になされていない.三好ジオパーク構想は,サイト設定時に地球科学の他に生物学の専門員がおり,生物学的な価値が高い場所に関して,生物学の視点を取り入れ,サイト設定を行なった.前提として,希少種や固有種がいること,多様な生物種が確認できること,自然度が高いこと,生育環境が周辺と比べ貴重であること,これらのいずれかに該当する場所から,地球科学的な価値が付随する場所が選ばれた.ただし,現時点では,生物学が推奨する広い面積での保護区のデザインは実現しておらず,地質遺産の保全方法に合わせた,比較的狭い面積での設定となった.

ジオパークと地域資源 vol.6 no.1 pp.16-21
2024.08.29公開

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●[資料]四国西予ジオパークにおけるツル・コウノトリ飛来地を生態サイトに指定したプロセス

加藤 雄也

四国西予ジオパークは,2013年9月に日本ジオパークに認定され,現在30のサイトがある.生態サイトは3か所あり,そのうち直近に指定されたものが「ツル・コウノトリ飛来地」である.日本ジオパークに認定された当初は,コウノトリが里山環境の象徴的な生物として四国西予ジオパークのパンフレット等で取り上げられていたが,その保全を意識した具体的なサイト指定はなされていなかった.しかし,ジオパークの活動とは独立して,コウノトリやツルに関する調査・研究や保全活動が進められ,2021年にサイト指定に至った.サイト指定が進んだ要因としては,①長年,調査・研究や保全活動が行われていたこと,②サイトの範囲を検討する上で足掛かりとなる保全エリアが,既に設定されていたこと,③ジオパークの再認定審査で生態サイトの追加指定が提案されていたこと等が挙げられる.特に,ジオパークの活動と独立して,専門家が関わる調査・研究活動が継続的に行われてきた実績は,大きな判断材料であった.新たな生態サイトの指定にあたっては,こうした調査・研究活動を行政等が支援する体制の構築が重要であると考えられる.

ジオパークと地域資源 vol.6 no.1 pp.22-27
2024.08.29公開

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●[資料]進化が繋ぐジオとエコ:伊豆大島を例として

伊藤 舜

進化は生物の遺伝する形質が世代を経るごとに変化する過程である.進化学ではこの過程の中で,どのような要因が関わるかの解明を主題とする.この時,地質学的活動は環境を激変させるため,生物進化に対して多大な影響をもたらす.したがって,多様な地質学的活動の痕跡が見られるジオパークは,地質学的活動の中で生じた生物進化を検証できるフィールドであることが期待される.例えば伊豆大島では,動物における体色の黒色化が見られる.これは玄武岩との関連が考えられる.このような知見は,生態サイトの選定や保全のみならず,ジオサイトの付加価値につながる.しかしながら,伊豆大島のような知見を得るためには,専門性や実験設備が課題になる.そのため,大学等研究機関や専門家との連携,学術研究助成の活用がより一層必要となるであろう.また各ジオパークでは,生物系専門員の積極的な雇用が地質学的活動と生物を繋ぐ最新の研究知見の蓄積に繋がることが期待される.

ジオパークと地域資源 vol.6 no.1 pp.28-32
2024.08.29公開

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●[資料]山陰海岸ユネスコ世界ジオパーク西部,鳥取県岩美町浦富海岸における専門家を招聘した海岸生物相調査とその成果活用

太田 悠造

山陰海岸ユネスコ世界ジオパーク西部に位置する,鳥取県岩美町浦富海岸の鳥取県立山陰海岸ジオパーク海と大地の自然館(以下,当館)周辺では,海のアクティビティ利用客数が年々増加し,そうした利用客への海洋生物に関する普及の必要性が高まってきている.しかし,多くの海洋生物分類群の生物相の調査が行われてこなかった.そのため,2017年から現在に至るまでに,様々な分類群の専門家を招聘し,主にスキューバダイビングによって生物相調査事業を実施し,そのノウハウを記載した.これまでに,ホヤ類,ウミウシ類,棘皮動物の生物相調査を実施し,約280種を記録した.またゴカイ類については現在も実施中である.それらの中には新種などの学術的に価値の高い成果も得られ,現在も種同定を行っている分類群もある.これらの事業で得られた標本,写真,観察結果などは,当館の展示と普及,地域のガイド向けガイドブックにふんだんに活用されている.

ジオパークと地域資源 vol.6 no.1 pp.33-39
2024.08.29公開

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●[資料]土佐清水ジオパークにおけるジオパーク,植物園,市民が連携した植物相調査の取り組み

森口 夏季

「ジオ・エコ・ヒト」という言葉に代表されるように,日本のジオパークでは,地質遺産のみならず,自然遺産,文化遺産との繋がりも重視されている.しかし,ジオパーク管理運営団体の専門性の不足等から,多岐に渡る関連分野の全てについて十分に情報を収集し,活用することは困難である.土佐清水ジオパークでは,エリア内の植物に関する基礎情報の不足が課題となっていた.そこで2022年から,高知県立牧野植物園と連携してエリア内の植物相調査を実施している.この調査では,約150点の植物標本を収集し,学校教育や企画展示で活用した.また,絶滅危惧植物の自生が約20年ぶりに県内で再確認されるなどの成果があがった.さらに,市民とジオパーク,植物園の情報共有ネットワークができつつある.今後の調査の継続体制の確立や,この調査で得られた情報をサイト選定や保全にいかに活かしていくかが課題である.

ジオパークと地域資源 vol.6 no.1 pp.40-47
2024.08.29公開

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●[資料]隠岐ユネスコ世界ジオパーク地域におけるハマナス保全活動の苦悩と未来

立花 寛奈

日本海に位置する隠岐諸島は最終氷期に本州と陸続きになった地史をもつ.その影響で隠岐諸島には暖温帯,冷温帯,亜高山帯,大陸と共通する生物が海岸沿いから山地まで混在する独特な生物相が形成されている.隠岐ユネスコ世界ジオパークでは寒い地域の代表種の一つとしてハマナスが象徴的に取り上げられているが,その生育地は減少しており生育状況も確認されていなかった.そこで2022年から隠岐ジオパークでは地域住民とともにハマナス再生プロジェクトを進めてきた.本プロジェクトでは,①大学と連携した分布調査,遺伝子解析調査,②地域住民と共にハマナス再生活動を行った.分布調査や遺伝子解析調査を行うことによって保全方針を検討する上での科学的な根拠が示され,地域住民との再生活動もある程度方針をもって進めることができた.一方,遺伝的な保全について地域住民の理解を得る難しさが課題となった.地域住民と行うハマナス再生活動については,周知活動を主とし地域活性化イベントと組み合わせてイベントを開催した.

ジオパークと地域資源 vol.6 no.1 pp.48-54
2024.08.29公開

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●[資料]生態学エッセンスで地域社会を変えたい -鳥海山・飛島ジオパークにおける取組み

長船 裕紀

ジオパークの現場では「ジオ・エコ・ヒト」というフレーズが唱えられているが,「ヒト」と「ジオ」との関わりは,間に介在する「エコ」(生態学エッセンス)を通すことで,ジオパークを利用する人にとって,より鮮明で具体的な理解につながる可能性がある.地域社会におけるジオパークの理念の理解を深めるためにも,ジオパークに携わる者が生態学エッセンスを介して普及促進を図ることは有効であると考えられる.鳥海山・飛島ジオパークでは,生態学的な切り口を積極的に取り入れて活動するよう努めている.自ら主催する事業だけでなく,地域社会が主導する既存の事業にも生態学エッセンスを介して関わることで,地域社会がジオパークの理念の理解を深め,「自分事」として自走する取組みにつながりやすい.そのためには双方向的で丁寧なコミュニケーションが必要である.具体的な事例として,①地域社会の生態学リテラシー不足に起因するSNS炎上事案とその後の対応,②学校教育の現場での自然体験プログラム考案において「ジオ」と「ヒト」を「エコ」でつなげる工夫,③ジオサイトの遺産価値をジオパークとは別の枠組みでも見える化して地域の主体的な活動を支援する取組みについて報告する.

ジオパークと地域資源 vol.6 no.1 pp.55-62
2024.08.29公開

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●[記事]分科会「ジオ・エコ・ヒト -なぜジオパークで生態学?」の成果:「エコ」に関する理解の共有と交流の活発化

平田 和彦・中村 真介・藤井 利衣子・加藤 雄也・福井 智香子・伊藤 舜・太田 悠造・長船 裕紀・立花 寛奈・森口 夏季

ジオパークの現場では折に触れて「ジオ・エコ・ヒト」というフレーズが聞かれるが,「エコ」が示す中身やその重要性に関する理解と議論は未だ十分とは言えず,ジオパークにおける課題の一つとなっている.そこで,1)ジオパークにおける「エコ」に関する共通認識を深めるとともに,2)「エコ」を軸とした交流・議論を活発化させるきっかけを作ることを目的として,2023年10月28日に第13回日本ジオパーク全国大会 in 関東において,日本ジオパークネットワーク生態学ワーキンググループが企画する初めての分科会「ジオ・エコ・ヒト -なぜジオパークで生態学?」を開催した(平田ほか, 2024a).

本稿では,本分科会で掲げた2つの目的に対して得られた主な成果として,1)ジオパークにおける「エコ」の現状と課題の共有,2)「エコ」を通じた交流・議論の活発化について報告する.

ジオパークと地域資源 vol.6 no.1 pp.63-67
2024.08.29公開

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●[記事]第13回日本ジオパーク全国大会 in 関東におけるガイド研修会の報告

福島 大輔・西谷 香奈・今井 ひろこ・山崎 真流子・田畑 朝恵・松本 宏樹・江川 理恵・荒町 美紀・吉野 弘子・荒川 和子・永田 ゆき子

ガイドに必要とされるインタープリテーション技術.うまくいくインタープリテーションはTORE 「強力なテーマがあり(TT)簡単についていけるように整理されていて(OO)来ている人にとって関連があって(RR)楽しい(EE)」という4つの要素が揃っている.今回の研修会では,他地域ガイドとの交流を深めつつ,TORE の基礎を学び,実践者たちからの経験談をもとに,参加者同士,互いに学び合うことを目指した.参加者数は114 名.

ジオパークと地域資源 vol.6 no.1 pp.68-70
2024.08.29公開

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